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嫌い、時々大好き。

作:終める

ごちゃごちゃしているくせに、ちんまりした駅前。
遠くに出る気も失せるぐらい、何でも手に入るところ。
こんなのだから。
ナナちゃん人形の前で私は待っているのに。
こんなのだから。
あなたはまた東京へ、大阪へとふらりと行ってしまうのだ。
あなたの好きなアニメキャラクターのコスプレや、私好みのおしゃれな服を着たナナちゃんを、通るたびに嬉しそうに写真に収めていたあなた。
それなのに。
あなたはどこに行けば手に入るにかわからない、何かを探しに行ってしまうのだ。
気が付けば、あなたが到着するはずの時間はとうに過ぎていた。
もしかして、あなたはもうここには帰ってこないのではないか。何かを見つけてしまったのではないか。急に怖くなる。

その時だった。
「見つけた」
あなたは帰ってきた。ナナちゃん人形の前に。
「ただいま。やっぱり名古屋は落ち着くなあ」
のんきに笑うあなたを
「遅い」
とにらみつけると
「ごめんね、待たせて。」
やっぱり笑うから、私はプイとそっぽを向く。
「あ、ナナちゃんもお祝いのドレス着ているじゃん」
そんな私をよそに、君は嬉しそう。
「僕たちを祝ってくれているんだあ」
「は?」
私は驚いて振り向く。
「日本中を見てきたけどさ、僕の家はやっぱりここだよ。名古屋の、君の隣」

あなたと、ナナちゃんまで、あんまり優しく笑って見えるから、名古屋駅前の鮮やかな景色が何だけ滲んで見えてしまう。

これだから、名古屋は嫌いだ。

嫌い、時々大好き。