ノッポ
「背が高いね」
てっきり私のことかと思ったけれど、言葉はうんと下の方で飛び交っていた。あら、私だって負けてないわよって目をやると、ピンク、金色、青。カラフルに髪を染めた十七、八歳くらいの女の子たち。皆おなじ制服を着ているので高校生なのだと思うけれど、おしゃれをする、色とりどりの「私」になる、それだけで何だかうきうきしてしまう気持ちはよく分かるから、最近は自由におしゃれを楽しめる学校があるのねとうれしくなった。けれどよく見ると、そう言われたピンクの髪の子はあまり良いふうに受け取っていないようで、
「背が低い方がかわいいじゃない」
と、言った。
そんなことないわ。とても素敵なのに。心は声にならず、百貨店の方へ入っていく彼女たちを私は見送るしかできない。
背の高いのを苦く思ったことはなかった。少し窮屈ではあるけれど、代わりに何でも見えるから。
ゆっくり、ゆっくり街が移り変わっていくのも、流行も、季節の変わるにおいだって敏感に感じることができる。ああ、あそこの彼の髪が薄くなっていることもね(おそろいね)。それに、たくさんの人が私を見てくれる。時には一緒に写真を撮ってくれることもあるのよ。もしも私が普通だったら経験できない、とても素敵なことでしょう。唯一いやなことがあるとしたら、ふざけて脚の間を通られることかしら。私も若くはないけれど、いつまでもレディとして扱ってほしいものだわ。
更ける。あちこちライトが消されて、今日もとっぷり静けさにつつまれる。ここ数年、夜も「聞き屋」という看板を掛けた人がそばにいて、話し声がするからあまりさみしくもなくなったけれど、たったひとり、ここに佇む時間もきらいじゃない。あの子はまた来てくれるかしら。誇らしく立つ私を見て、今度は何か思ってくれるかしら。かすかな街の息づかいを枕に眠る。おやすみなさい。
(スカートの中がどうなってるか、ですって? 決まってるじゃない)