ナナちゃん人形で、六時半。
「ナナちゃん人形で待ってる。六時半に。」
君との初めての約束。いつものあの慣れ親しんだななちゃん人形の下に君が現れること。何だか夢みたいで、私には全く想像がつかなかった。
人生で初めてのデート。これまで、何度あの下で待ち合わせすることを夢見てきたことか。その夢がやっと叶う。明日の六時半は、きっと世界一幸せだ。
いつも、友達との待ち合わせは大抵、あのナナちゃん人形だった。名古屋っ子ならあるあるで、そこが一番見つけやすくて、ちょうどいいよねってなって、長年それが定着していた。
いつも行くたびに違うコスチュームをきて、可愛く着飾ってあるななちゃん。名古屋の人気者の君の下で、私は明日、緊張して所在なさげに君を待つ。
待ち合わせの一五分前。ナナちゃんの真下で立つ。早く着いたはいいけれど、こう言う時ってどんなふうに待つべきなのか。本当はドキドキする。何を話そうとか、会った瞬間どんな会話をしようとか、そんな事を考える。
だけど、ナナちゃん人形があまりにも可愛い服を着ていたから私は思わず写真を撮った。名古屋在住なのに。どうせいつもみれるのに。まるで観光客かのように、この後のデートの緊張を紛らわすかのように。
「お待たせ」
シャッターと君の声は同時だった。
「写真撮ってた?」
君は優しそうに、目を細めて言う。きっと、君は全てお見通しだろう。この緊張も、それを隠そうと写真を撮っていたことも。
「今日もナナちゃんオシャレだね」
「そ、そうですね。」
オシャレなんて言ってしまう、君の言葉遣いが好きだった。
私はそっとスマホをしまって、君とのデートに駆け出した。