金時計の怪鳥
名古屋駅。地下鉄から在来線に向かう途中に金色のモニュメント時計がある。待ち合わせ場所に使われるためか、金時計の周囲には待ち人が集まっている。俺もその待ち人の一人だ。
待ち時間をつぶすため、ぼんやりと周りを眺めていたがある一点を見てぎょっとした。いつのまにか金時計の上に奇妙な鳥がとまっているのである。
鳥は茶色いフラミンゴにトサカが生えたような外見で、窓から差し込む光を浴びて黄金色に輝いて見える。こんなにも目立つ外見をしているのに、鳥に気づいている者はいない。鳥は周囲をゆっくりと見まわして、俺と目が合った。
「小僧、我の姿が見えるのか?」
不意に俺に向けられた声。慌てて周囲を見渡すが、俺に声をかけた人物はいない。鳥に視線を動かすと、まだ俺の方を見ている。
「聞こえているのだろう、我の姿が見えるのか?」
やはり俺に声をかけているのは鳥のようだ。鳥の表情というものは分からないが、怒らせてはマズいと思い何度か大きくうなずいた。
「ふむ、見えておるのか。小僧は運が良い。我は久方ぶりに下界にやってきた。この地は我を崇めている者が多く、我の形をした南蛮菓子があるくらいだ。小僧も知っているだろう?」
鳥はご機嫌な様子で流暢に話し出した。一方の俺は鳥に話しかけられたという衝撃もあり、混乱気味だ。俺がそのまま何も言わずにいる様子を見て、鳥は首を傾げた。
「……もしや知らぬか。ま、まぁ人の世は流行り廃りが早いからな……。そうか、知らぬか……」
鳥は寂しそうにつぶやくと、両翼を広げた。金時計からふわりと降り、出口に向かって飛んでいく。通り行く人の頭上をゆっくりと滑空していくが、誰も鳥に気づかない。
やがて鳥は見えなくなったが、俺はその場から動けなかった。しばらくして、友人がケーキ箱を持ってやってきた。
「お待たせ。久しぶりにあの店行ったけど、もう売ってないんだな、しゃちぼん。」
作品の短評
オケ太郎
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