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金賞

未来の会話

作:霜月彩華

ぱら、と息子の教科書のページをめくる。そこに懐かしい写真を見つけ、思わず隣りの友の肩を叩いた。
「見てよ、これ。『金時計』だ!」
「……ただの時計に見えますが、有名なのですか?」
僕にとっては青春の代名詞——というのは言い過ぎだが、様々な記憶が呼び起こされる、思い出の時計だ。だが残念なことに、当時を知らない彼の共感は得られなかった。
「わかってないなぁ。この時計はね、名古屋駅の定番待ち合わせスポットなの。遊びに行く人達で毎日溢れてて、すごく活気があったんだから!」
金に塗られた背の高いアナログ時計。長いエスカレーターを背景に、多くの人が行き交う。そんな色鮮やかな写真だ。当時の光景が目に浮かぶ様で、最近の教科書はすごいな、と素直に感心する。
「そこまで熱く語るなんて、何かあったのですか?」
「何かって言う程じゃないけど、色々あったよ。一番大きいのだと——」
明日の10時に金時計集合な! と友人と約束したものの、うっかり場所を間違えた、とか。
「当時名古屋に住んでいて、しかも有名な時計だったのに、間違えたのですか?」
「いやー、駅の反対側に『銀時計』があって、そっちと聞き間違えたんだよ。丁度、新幹線を使う予定だったし」
銀時計は、新幹線乗り場の目の前だ。正直、口約束だったので僕ではなく相手が間違えた可能性もあるが。
「成る程。ところで、この写真では全員がマスクを着用していますが、2020年代でしょうか?」
「あぁ、コロナの時だね。何でこれが社会の教科書に載ってるのかと思ってたけど、そういうことか」
あの時は大変だった。マスクに手指消毒、外出自粛、その他諸々。
「二度と経験したくない、と聞きます。私達も気を付けなければいけませんね。」
「そうだけど、でもさ——」
笑顔を作る友に、続きを告げるべきか迷ったが。
「次があったとしても、君は大丈夫じゃないか。ロボットなんだから」

未来の会話

作品の短評

オケ太郎

キャラクター

未来の会話

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