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色のある街

作:鈴木龍太郎

 「名古屋の街ってどことなく金色だよな」
金時計前で待ち合わせていた友人は会うなりそう言ってきた。
彼曰く名古屋城はもちろんの事、ここ名古屋駅も「金色」のエリアだという。
 「それは単にシャチホコなり時計なりが金色だからじゃないのか」
 「いや、さっき待ち合わせの確認用で送った画像あったろ。あれ見てみ
ろよ」
言われた通りさっき送られてきたメッセージアプリの画像を見返すと、全
体が確かにシャンパンゴールドのような色合いにも見えてくる。不思議な
ことに時計はその中にあってあまり存在を主張していない。
 「まあ分からんでもないな」
 「だろ?無事主張が通ったところでそろそろ行こうぜ」
彼が出口に向かって歩き出したのを追いながらさっきの画像を反芻する。
確かにこの金時計の辺りは金色っぽく見える、他の場所はどうだろうか。
大須は観音様とアーケードの感じから赤色、今池だったらは何となく黄色
のような感じがする。
決して各色が主張するような派手さは無いにしてもそこはかとないオー
ラのような「色」が出ているのが名古屋なのだろうなあ、などと想像する
のも悪くはない。
駅から出るとずいぶんと夜風が冷えていた。もうすぐ秋も終わって冬にな
るが、街ごとの色はおそらく変わらないだろう。そう考えながら「金色」の
駅を後にした。次はどこの色のある街に行けるだろうか。

色のある街

作品の短評

オケ太郎

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