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銀賞

いつまでも幸せに暮らしましたとさ

作:ジャッキー

カランコロン
下駄の音まで楽しそうに響かせて、美智子が歩く。撫子色と藤色、水色が混じり合う絞り染めの浴衣を着た彼女は、人で賑わう大須でもパッと目を惹いた。
その姿に見惚れていると、「映画、楽しみね」
と美智子が微笑んだ。

「ああ、うん」
「ねぇ、ちょっとなにか食べましょう?」
「ああ、うん」ああもう、なんてかわいいんだろう。僕は夢うつつで、真夏のアイスクリームみたいにとろけた顔をしていたんだろう。
美智子は突然、繋いでいた僕の手をぎゅっと握って引き寄せた。
「もう! 聞いてるの?」
「聞いてる。聞いてるよ。ごめんね、美智子に見惚れてて」
「もう、そんなことばっかり言って。60 年後、私がお婆ちゃんになっても同じこと言えるのかしら」
ぷりぷり怒った顔もかわいい。怒られても顔がにやけてしまう。重症だ。
「末永く、よろしくおねがいします」僕はなんだか変なことを言い、「こちらこそ、末永くよろしくおねがいします」と美智子がぺこりと頭を下げた。

カランコロン
下駄の音がリズムよく鳴る。
ふんわりやわらかな浴衣に、真っ白な髪を綺麗に結った美智子は、あの時と変わらず人で賑わう大須の街でもパッと目を惹くほど綺麗だ。

「怪談寄席、おもしろかったわね」美智子が言った。
「ああ、演芸場久しぶりに行ったね」僕が答える。
「ねえ、ちょっとなにか食べましょう?」
「ああ、うん」
「クレープ食べましょうよ。あそこのマンゴーのクレープ食べたいわ」
「ああ、うん」
「あなたはレモンスカッシュ?それとも、タコス屋さんに行く?」
「ああ、うん」ああもう、なんて幸せなんだろう。僕は夢うつつで真夏のソフトクリームみたいにとろけた顔をしていたんだろう。
美智子は突然、繋いでいた僕の手をぎゅっと握って引き寄せた。
「もう! 聞いてるの?」
「聞いてる。聞いてるよ。ごめんね、美智子に見惚れてて」
「もう、そんなことばっかり言って……60 年前から変わらないんだから」

いつまでも幸せに暮らしましたとさ